第2章 1 私の今朝の運勢は?

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第2章 1 私の今朝の運勢は?

 結局、この日お姉ちゃんは家に帰って来る事は無かった。私がお風呂から上がって来るとスマホに姉からのメッセージが届いており、今夜は彼氏とお泊りデートになるとの内容が書かれていたのだ。…やれやれ、全くラブラブなカップルだ。でも今年2人はハワイで結婚式をあげるのだから今は最高に幸せな時期なのだろう。しかもお姉ちゃんの婚約者はお姉ちゃんが結婚して出て行くのを私が寂しがるだろうと思い、結婚後はこの家で住む事にしてくれたのだ。私に気を使ってくれるなんて…。 「本当に優しい彼氏さんだよね…」 と言う訳で、今朝は私一人の朝食だから…手抜きをしよう。食パンにバターを塗って、トースタープレートに生卵を落して、その隣にウィンナー2本乗せる。これを食パンと一緒にオーブントースターに入れて5分でセット。 やかんをガスに掛けてから、冷蔵庫から野菜ジュースにヨーグルトを出して、私は早速食前ヨーグルトを頂く事にした。 「いただきまーす」 蓋を開けてヨーグルトを口に入れる。モグモグ。うん、美味しい。 確かネットで朝食前にヨーグルトを食べると食事の脂質や糖質を分解してくれるって書いてあったんだよね〜。別に私は太っている訳ではないけれど、それでも体型は気になるものね。なにせまだ22歳なんだし!ヨーグルトを食べ終えた頃にお湯が沸いたので、マグカップにインスタントコーヒーを淹れて、熱湯を注ぎスプーンで混ぜる。私が好きなコーヒーの飲み方は何も入れずにブラックで飲む事。 「う〜ん…いい香り。…但し、インスタントだけどね」 チーン! 丁度、オーブントースターから焼き上がりの音が鳴った。食器棚からお皿を取り出し、火傷しないようにまずはミトンをはめてトースタープレートを取り出す。ジュウジュウと焼けた目玉焼きとウィンナーの美味しそうな香りがキッチンに漂う。次にトーストを皿の上に乗せてキッチンテーブルの乗せれば、今朝の朝食が完成。手元にあったテレビのリモコンの電源をポチッと入れて、私は毎朝見ている朝の情報番組にチャンネルを変えると、食事をしながらテレビを眺めた。丁度テレビでは今朝の占いをやっている。 「どれどれ…かに座の運勢はどうかなあ…?」 私はウィンナーを口に頬張りながら画面を食い入るように眺め…がっくりと肩を落とした。何と今日の運勢は12星座中、かに座が一番悪かったのだ。 「はあ…見なければ良かった…」 その後、情報番組は天気予報へと変わる。今日の天気は1日快晴。という事は…今朝もビラ配りに行かなければならないのかなあ…。私的にはデスクワークをして一刻も早く仕事を覚えたいのに…。手元に残った最後の食パンの欠片を食べ終えると、私は席を立った。そして手早くべ終えた食器を洗い、出勤の準備をする。 「洗濯…する暇なかったなあ…まあ、いいか。お姉ちゃんは今日も仕事が休みだし…お願いしちゃおう!」 「鈴音」 玄関を出て鍵をかけていると、声を掛けられた。振り向くと亮平が玄関のドアを開けてこちらを見ている。 「あ、おはよう。亮平」 玄関の鍵をかけ終え、私は亮平を見た。 「そ、その…昨夜、忍さんは…?」 「うん、帰って来なかったよ。お泊りデートだって。」 「な…何だって…?」 それを聞いた亮平の顔色が見る見るうちに変わっていく。 「くっそ〜…あいつ…よくも俺の忍さんを…」 亮平は拳を握りしめながら、悔しそうに言ってるけれども…。亮平はずっと子供の頃から姉に片思い中なので、一度も姉は亮平の物になった事等ない。そして私は亮平が好き…。だから私もずっと片思い中なのだ。それは姉の結婚が決まった今だって、ずっと。 だから私はわざと言った。 「亮平~。もうお姉ちゃんの事は諦めたら?9月には2人はハワイで挙式するんだよ?ここに手頃な相手がいるじゃないの〜」 「馬鹿言え、俺がどれだけ忍さんを好きなのかお前に分かるはずが無いだろう?式までだってあと3カ月残ってる。俺は最後まであきらめないからな…」 「うわっ!往生際悪すぎっ!」 すると亮平は言った。 「うるさい、お前に俺なんかの気持ちが分かるよ。それにな、例え世界が滅んで残された人類が俺とお前だけになっても、お前を選ぶ事なんか無いから安心しろ。ほら、さっさと会社行けよ。遅刻するだろう?」 シッシッと亮平は私を追い払うように手を振る。全く自分で呼び止めておいて…。 「はい、はい、それじゃ行くわ。じゃあね」 そして私は亮平に手を振ると背中を向けた。 ズキリ 亮平の言葉で傷付いた胸を押さえながら、私は駅に向かって歩き出した—。
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