あきらめない女

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あきらめない女

 女がヒステリックな声で叫んでいる。 「いいから出てきなさいよ!絶対逃がさないからね。絶対に……。」  手には凶器。目は完全に血走っている。見つかればオレは間違いなく消されるだろう。  恐怖で体が固まる。一体オレが何をしたというのだろう…… ──今から30分前  オレは女の前を横切った。の事なのに、女は舌打ちした後、狂ったようにオレを追いかけてきた。  オレは訳が分からないまま、とりあえず必死で逃げ、女の視界から隠れるように身を(ひそ)めた。身動き一つできず時間だけが過ぎていく。女は相変わらず必死の形相でオレを探している。全く諦める気配はなさそうだ。  女が再び叫ぶ。 「ちょっとアンタ、今どこにいるのよ!隠れたって無駄なんだからね。いい加減出てきなさいよ!!」  どうにかしてこの場から逃げ出さなければ……。それとも降参して横切った事を謝罪するか……。いや、今目の前に出れば間違いなくオレは()られる。    恐る恐る女の様子を伺うと、オレに背を向けて立っていた。 「今だ、今しかない!」  オレは全速力で走った。  だか、女は素早くオレの気配に気付き振り返る。 「そこに居たかっっ!!」    そう叫びながら女は手に持っていた殺人(さっちゅうざい)スプレーをオレに向かって噴射した。  オレの体は一瞬にして(しび)れ動けなくなった。 ──女は動けなくなったオレを白布(ティッシュ)で包みこんだ後、満足そうな声で 「バイバイ、害虫(ゴキブリ)君。」と言って『ダストボックス』と書かれた箱にオレを(ほうむ)った。           ─完─
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