01-4. 彼女の正体

3/5
前へ
/74ページ
次へ
「スパイト保持者には、星型の痣があることはご存じですよね?」  気を取り直し、萌香が話し始めた。 「はい……あ、もしかして」 「畑中沙友里に変わった形の痣がある、という情報を得たんです。ただ、それが星型なのかどうかはわからないんですよねぇ。おまけに、場所が簡単には目視できないところで」  スパイト犯罪者に必ずあるという星型の痣は、人によってついている場所が違う。ただ、見えづらい場所にあったとしても、痣の色は赤く、覚えやすい形ということもあり、人の目についた場合は印象に残りやすい。なので、そういった痣の情報が入れば、その人物をマークすることになっている。  犯罪との関わりを突き止めれば、任意で引っ張れる。そこで痣の場所と形を調べるのだ。  星型の痣は、皮膚を流れる血管が異常に増殖したり奇形を起こすことで皮膚が赤く変色する「血管腫」とほぼ同じものと考えられている。今ではその痣を発見するために、直接皮膚に当てず布の上からでも血管を可視化できる専門の装置が開発されていた。それを使用すれば、どこにあるのかは一目瞭然だ。  沙友里にも変わった痣があるという情報が入ったからこそ、大雅たちが動くことになった。早急に沙友里の身柄を押さえ、装置を使って痣を確認する必要がある。 「それなら、どうしてさっき身柄を押さえなかったんですか?」  顔を変えていても、沙友里であることがわかっていたから尾行していたのではないか。 「押さえようと思ったところで、龍輝、お前に気付いた」 「あ……」  大雅は沙友里をつけている龍輝に気付き、様子を窺うことにしたのだ。 「制服姿で尾行しとるんが、どうしても気になってな。まずはお前を締めあげようと思った」 「彼女が何かやらかして、それで龍輝さんが追いかけてるんだとしたら、すぐに引っ張れますしねー」 「それもある」 「それも?」  他にも何かあったのだろうか。龍輝が首を傾げると、大雅は僅かに目を細め、片方の口角だけをクイと上げた。 「お前はあの女を、何か確信を持った目で追いかけとった。これは何かあると踏んで、まずはそれを確認せなって思った。……自分と同じ匂いを嗅ぎ取ったんかもな」  同じ匂い。それは龍輝が持っているような、ある意味、特別な能力のことを指しているのだろう。  龍輝はゴクリと唾を飲み込み、意を決して尋ねた。 「あの、新條さんの能力ってどういったものなんでしょうか」  大雅が揶揄うような視線を寄越す。言葉にはしていないが「知りたい? どうしようかなぁ」とでも言いそうな顔。イラッとするが、それを感づかれでもしたら、大雅はたちまちへそを曲げてしまうだろう。  龍輝は焦れる気持ちを抑え、大雅の返事を待った。しかし、いつまで経っても大雅は答えようとしない。 「新條さん」 「ま、そのうち追々……」 「そのうちって! オレは交番勤務で、この事件には関われないていうのに!」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加