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ともあれ。
俺は天使の助手としてやるべきことをした。
とはいえ、ごく普通のことだ。
彼女の定期を最寄り駅へと届けたのだ。
これで紛失物として駅の係から連絡が入って、保管されてる場所に
取りに行くことになる。
務と桜の降る路上で押し問答しているところへ、駅からの電話が
彼女へと届いた。
彼女は安堵し過ぎて、その場にしゃがみこんでしまった。
「ごめんなさい。言えなかった......。
務と手をつないで、ずっと上ばかり向いて桜並木を歩くのが、
すごくすごく幸せで、桜と青空と務の横顔に見とれてたら、
定期を落としてたって、言いにくかった」
「相変わらずポーッとしてるなあ。でも、みつかって良かった」
「みつけてくれた人、お礼がしたいけど、そういうの無いって」
「気持ちは伝わるよ。保管所ってどこ?これから行こう。
取りに行くのは早いほうがいいよ」
そう言って、務が手を差し出して、彼女が握り返した。
それらを俺は、リルと2人で横断歩道から見下ろしていた。
桜が顔の横にある。
恵比寿の桜って、満開になるとスゴイって初めて知った。
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