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運命の仲間‐3‐
うつむいたまま、ポソポソとヴァイノは続ける。
「なんか、だまされてんじゃねーかって、思って……」
「気にしてないよ、大丈夫。この姿は、母さまからいただいたものだから。大事にしようって、思ってるし。ねえ、ヴァイノ?」
のどやかな声にヴァイノが目を上げると、黒目がちの大きな瞳が、わくわくした様子で自分を見ていた。
「もし、嫌ではないのなら、ここを手伝ってくれないかな。フロラは、どう?」
「お仕事したら、もう、危ないこと、しなくていいね!隠れなくても、いいんだね!」
金髪の少女の、どこかほっとしたような笑顔に見上げられて、ヴァイノの眉毛が下がる。
「えっと、殿下!」
突然、麦わら色の髪をしたスヴァンが立ち上がり、見よう見まねの礼をとった。
「俺たちを雇ってください!俺、スヴァンっていいます!」
「あたしも働きます!メイリですっ」
「私はアスタと申します。何でもやります」
少女ふたりも次々と立ち上がり、同じように胸に手を当てる。
「ここで働くことに、異議はないんだな」
ジーグが少年たちを見回した。
「それならば条件が整った。私の居所を教えよう。……もう、わかっているだろうがな」
「ジーグさんって、殿下の家臣、ですか?さっき下僕って言ってたけど、あなたほどの人が?あ、僕はトーレです。よろしくお願いいたします」
勧められた椅子にも座らず、立ったままでいる少年が、冷静に尋ねた。
仲間内では年長のようだが、それでも、『少年』と言われる年だろうに。
その青鈍色の瞳には、やけに老成した陰がある。
「ジーグは、僕の師匠、だよ」
レヴィアが嬉しそうな微笑みをトーレに向けた。
「知識も、剣術も、何でも教えてくれる。僕に世界を見せてくれる、大切な師匠なんだ」
「……なるほど。お嬢は正しいな。『レヴィアは可愛い』じゃないか」
「あのさ、お嬢って言うけどさ。それ、さっきの喧嘩っ早そうな奴のことじゃねぇよな」
ラシオンの焦れた瞳に、壁にもたれて腕を組むリズワンは、ニヤリと笑い返すばかり。
「で、お前はどうする。レヴィア殿下の隊に加わるのか」
「トーラの殿下、なぁ。……トーラ国のなぁ。ま、嫌な奴じゃあなさそうだし、報酬もいい。でも、まだ子供なんだな。いくつだっけ」
「十五になられます」
満面の笑みを浮かべているスライが、すかさず答えた。
「十五、か。……愚連隊連中と同じくらいか」
少年たちを見やるラシオンから、独り言のようなつぶやきが漏れる。
「よし、そうと決まれば」
ジーグが指を鳴らし、騒いでいる愚連隊の注目を自分に向けさせた。
「リズワン、女性陣を頼む。着替えや、そのほか日常生活に必要なものを調えててやってくれ。ラシオンは男連中を頼んだ。私はその間、皆の部屋を用意しておこう」
「やった!」
「わあっ!」
もう逃げることもなく、一日中、寝床を探して、街中をさまようこともなく。
この屋敷で、仲間と一緒に暮らすことができる。
やっと実感できた愚連隊から、盛大な歓声が上がった。
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