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谷
高く高く飛んで、遠く遠く飛んで。
雨に降られた白い綿毛は、ついに力尽きました。
落ちた先は谷の岩場。
「すみません。もう、飛べません」
寂しい岩場の痩せた土に、綿毛は種をそっと横たえると、その役目を終えて吹きすさぶ谷風に呑まれて逝きました。
「一人ぼっちになってしまった……」
谷に吹き付ける風は強く、フィーフューと
まるで魔笛のような音を立てます。
小さな種はたった一人でうち震えながら、そっと春を待ちました。
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