#1 始まりの、春野菜たっぷり肉巻き弁当

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「そ、そっか……。良かった……」  むぎの言葉に小さくそう呟いた知夏(ちなつ)。その頬は分かりやすいほど緩み、薄赤く染まっている。  そんな彼女の姿に訝しげに眉を寄せる(りつ)を見て、むぎは笑いを堪えるのに必死だ。 「可愛いねぇ~。ちなっちゃんは」  辛うじて何とか微苦笑を保ちつつ、ツンツンと肩を小突くと、「う、うるさいっ」と見事なツンデレっぷりで睨み返されてしまった。  そう。何を隠そう、彼女は律のことが好きなのだ。  高校入学前の春休み、互いの合格祝いで山梨へとグランピング体験に行ったときのこと。星空の下繰り広げた女子トークで、そのきっかけを教えてくれたことを思い出す。 ――……ということは、だよ?  そこではたと、むぎは小首を傾げ、人差し指をピンと立てる。  知夏の片想い歴は、かれこれ今年で3年目に突入するわけだ。 ――ちなっちゃんの目の色が変わった(片想いが始まった)のは、確か中2のときだったもんね。  そう思うと中々感慨深い。  そうして一人、ふむふむと、名推理する探偵の如く頷いていたむぎだったが、横から彼女がジトリとこちらを睨み下ろしていることに気づき、慌てて誤魔化すようにはにかんだのだった。
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