#1 始まりの、春野菜たっぷり肉巻き弁当

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 *** 「それじゃあ、高坂(こうさか)。手始めに、お弁当見せてもらってもいいかな?」  彼の前にいそいそと机をくっ付け終えたむぎは、席に着くと腕捲くりをしながら、にっこりと微笑んだ。  その言葉に、(りつ)のみならず知夏(ちなつ)までもが、ぎょっと瞳を見開いたのは、言うまでもない。 「て、手始めにって……。俺これから何されるんだよ……」  そう若干上半身を引いた彼だったが、流石はクール男子。軽く上目遣いにこちらの様子を窺いながらも、素直に黒のボックス型の袋をチャックで開封する。  そして、同じく黒一色のお弁当箱をその中から取り出すと、丁寧にそっと(ふた)を取った。  その一連の動作は決してゆっくりではないのに、何故かむぎの瞳にはスローモーションのように映る。 ――この瞬間が、一番ドキドキするんだよね……  片時も視線が逸らせない。無意識にゴクリと喉が鳴った、その直後だった。  急に何を思ったのか、律は「あ」と声を上げて蓋を元に戻した。 「え!?ちょ、ちょっと!何で閉めるの?」  訳が分からず、おろおろと慌てながら、彼とそのお弁当を交互に見るむぎ。  そんなむぎに、ふっと笑みを溢した律の瞳には、気のせいだろうか。――どこか意地の悪い喜色が宿っているように見える。  
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