#1 始まりの、春野菜たっぷり肉巻き弁当

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 出来上がった全ての具を、お弁当に詰め終えたときのあの達成感は、何とも言い表せないほどだった。  やったー!出来た!と、手放しに喜びながら台の上で跳び跳ねるむぎに、母は『頑張ったね。美味しそうに出来たね』と、嬉しそうに顔を綻ばせた。その姿を目にした瞬間、むぎの視界一杯に広がったお弁当は、何故だかとても特別なものに映った。  炒めすぎて、へにゃへにゃと不格好に縮れたキャベツ。所々焦げ目がついた卵焼き。ただふりかけを降っただけの白米。――決して上手く出来たとはいえない、それもありふれたお弁当なのに、むぎにはお気に入りの偽ダイアよりも、美しく見えたのだ。 ――ほんと、馬鹿みたいに嬉しかったんだよね……  そのときの光景を思い出し、内心小さく苦笑する。  しかし今思えば、その事がきっかけだったのだろう。むぎは(たちま)ち、お弁当の(とりこ)になった。  小学校では給食だったので、休日に態々(わざわざ)お弁当箱を用意し、朝食の余ったおかずを積めていた。  それ故、中学校の最初の授業日の朝は、『いよいよだ!』と、とてもわくわくしたものだ。その頃にはもう、包丁裁きやフライパンの扱いも大分手慣れていたと思う。  そして高校生となった現在もやはり、むぎは毎朝、お弁当を必ず作っている。  
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