前話 都会の営業

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前話 都会の営業

 都会の人混みを歩く。田舎に思いをはせる、俺はタケトシと呼ばれてる、都会に憧れ就職したは良いが、凄まじい刺激の嵐で全ての感覚が鉛の様だ。  会社に向かって歩いて行くが、人々にぶつからないように気を配る、すれ違う他人と言う名の壁の様に思える。  障害物競争、いやいや、ぶつかったら失礼だろう、キビキビ歩かねば。信号機が青になった途端溢れる人の群れ、ぶつからないように注意したが、すれ違い様ぶつかってしまう、生まれ変わりたい。 「すいません」 「すいませんじゃ、すまねーんだよ」  ヤバい人にぶつかってしまったのか? 男は舌打ちすると通りすぎていく、立ち止まったお陰で後が控えている。  まるで早くしろと攻め立てて居るようにも思える。俺は歩きだした。都会はお金で大抵の物は揃う反面、気を付ける事項もマッハで多い、慢性的なストレスを抱えていた。  会社にたどり着くと睨み付ける上司が口を開く。 「君はいつまでたっても会社のルールをわきまえない様だね。ここへは30分前に着かねばならない、2分遅刻してるよ、2分も」 「申し訳ありません」  上司は怒る。 「口だけは達者な様だ、君みたいな会社のルールを守れない者が、ひとりでも居ると企業としての、ミッションを達成できないだろう。何を考えて居るのだね君は、企業の一員として恥ずかしくない……」  上司の部下が上司の袖を引くと。 「あの、上司様、そろそろ別件が後に控えてますので」  上司は攻め立てる。 「まったく……。良いかい何度も何度も、この遅れた分は会社に貢献するように。なんのために30分前に来る……」  部下が上司の袖を引っ張ると。 「言ってもムダです、行きましょう」 「まったく」  何かにつけてイヤがらせを長々と語る上司だ。とはいえ遅れた分を取り戻すためいきなり作業に取り掛かる。  ローラー作戦。メドを付けた地区を新規開拓していくために、電話で売り込みを掛けていく。  これが苦痛なんだ。断られるのは当然だからだ、とにかく普通の精神じゃやっては居られない、まさに数打ちゃ当たると言うタフな仕事だ。新人はこの企業ではここに入れるそうだ。
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