前話 都会の営業

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 電話でローラー作戦、今回は港区周辺の電話番号を集めて訪問を取る仕事だ、うちの企業はコピー機メーカーだから、業務用印刷機械の売り込みだ。  今や印刷はありふれていて、大手コピー機メーカーや、パソコンなどのプリンターに押されて、ほとんど新規獲得は難しい、ライバルが多いと言う事は、選ばれ難いのも当然だ。  大手のコピー機メーカーと違って、中小企業のコピー機メーカーだぞ、話だけ聞いてくれる方が居るのかどうかも、死活問題だ。  案の定お昼までのローラー作戦は見事に敗北、まだまだ連絡先は残っている、ほとんど音信不通かお断りで気が滅入りそうだ。同僚ちゃんが。 「上司さんから電話よ」 「わかったよ、同僚ちゃん」  俺は上司の電話を取る。 「で、タケトシ君、進展はあったかね?」 「いえ、糸にも触れず、まだ港区は始まったばかりです」  上司は朝の調子でカンカンだ。 「半日掛けて一件も取れてないのかい!! 何やってるんだよ君!! それじゃあ、いや、このままじゃ、ご飯食べてけないよ!!」 「はい、申し訳ありません」  上司が長々と説教垂らして、沈んだ気持ちのまま昼食を食べる。同僚ちゃんは良いよなお得意様と取り引きしてる、いや、取り引きを継続してる。会社や個人のコピー機に対する対応をしている。  俺の作業とは違う困難さだが、苦しい、生まれ変わりたい。お昼が終わるとまた港区ローラー作戦を決行、音信不通。次は。 「うちでは要りません」  次は。 「売り込みはお断りです」  ハッキリ言って進んでる感じはしない、次は。 「田山コピー機です」 「コピー機は間に合って居るよ」  あっさり断られる。入社して半年、物凄く無能な気持ちで一杯になる、とにかく渇く。営業は会社の顔とは言うが、ほぼ無表情がいけないのかも知れない、電話はボイス、声だ。  セールストークしようにも門前払いされまくりなので、心は疲れ切っているのだろうと思いつつ、今日の1日を終え、会社から帰宅の道を歩く、充電切れそうなスマホみたいだと思うのだった。
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