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聖夜
自分が知らないものを捨てることはできません。
自分を越えるには、自分自身を知らねばなりません。
スリ・ニサルガダッタ・マハラジ
12月22日。
午前。
ピピッピピッピピッ・・・。
規則正しい電子音が鳴った。
ベッドで眠っていたバーンは、うっすらと眼を開けた。
上を向け指が開いた状態の右手が見えた。
力を入れて握ると左手を伸ばして、ベッドサイドに備え付けられていた時計のタイマーを止めた。
「………」
厚いカーテンが引かれ、部屋の中はほぼ闇に近かった。
しかし、その隙間から覗き込むように陽の光が彼の方を照らしていた。
その光が、朝になっていることを告げていた。
ゆっくりと上半身を起こして、ベッドに座った。
右手を額にあてながら考え込んだ。
バーンは自分でも一瞬どこにいるのか認識できなかったようだった。
見慣れない部屋の中にひとり佇みながら、昨日の記憶を呼び覚ました。
「…戻ってきたんだった…な」
バーンは昨夜深夜遅くにSFへ着いた。
そのまま空港からホテルへ直行したことを思い出した。
ベッドから立ち上がり、窓の方へと歩み寄った。
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