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カーテンの合わせの端を左手でつかみ、思いっきり開け放った。
思わず腕を上げて眼を隠した。
それほどまぶしい朝日が彼に降り注いでいた。
「SFへ…」
高層ホテルから見える眼下には美しい海と街並みが広がっていた。
碁盤の目のように整理された道路。
そこを走る車やケーブルカー。
モダンな高層ビルあり、昔からの見慣れた家や店。
自分が生まれ育った街。
悲しい想い出しかない街。
ラティを亡くしてから1度も訪れることの無かった街。
7年ぶりのサンフランシスコだった。
(……街は、君が生きていた時と変わらない。変わったのは、きっと…)
そんなことを思いながらバーンはうつむいた。
彼女の『死』を受け入れられたわけではなかった。
7年間ずっと考えていた。
自分のしたことを。
彼女の言ったことを。
彼女と自分の過ごした時間を。
毎年毎年巡ってくる自分の誕生日と同じ、彼女の忌日。
嘖まれる罪悪感と自責の念。
そして、後悔。
何度考えても現実は変わらなかった。
何度考えても答えは出なかった。
バーンはカーテンを握りながら眼を閉じた。
(事実が変わらないのならそれでもいい。せめて、君に…花を手向けたい。)
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