かくれんぼ

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「ちょっとあんた今どこにいるの?」  ピアノの国際コンクールで最終結果待ちをしている間、コンテスタントの蒼佑(そうすけ)が消えた。携帯に電話して二十回コールの後、ようやく「はい」と出た彼に、わたしは声を上げていた。  ちょっと目を離すとすぐどこかへ行く。放浪癖は小学生の頃から変わらない。 『……どこだと思う? 見つけてみてよ』 「はぁ?」  今日の蒼佑はなんだか変だった。いや、今日だけじゃない。コンクール出場を決めてから、少し様子がおかしいのだ。そもそもの性格がやる気ない、コンクールなんて興味ないという性格なのだが、今回のコンクールは自分から「出る」と言って妙にやる気を出し、練習に励んでいたのだ。  そのおかげか一次予選、二次予選と順調に勝ち上がっていき、ファイナルまで演奏しきった。  いつもなら「千佳(ちか)ちゃんが結果聞いて」とわたしに丸投げするのに、今日は「探せ」と言ってきた。一体どうしたというのだろう。  外にはファイナルまで出場できなかったコンテスタントや取材カメラマンなどがあちこちにいて少し騒がしい。ましてや国際コンクールなので色々な国の人たちがいて、日本なのに日本じゃないみたいで少し心細い。  ぐるっと一周見渡して蒼佑がいそうなところを探す。表側にはいなさそうだ。歩いて会場の裏側に行ってみる。
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