0人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてここで問題です。どうして僕はいつも目を離すとどこかへ行くのでしょう」
パリの街中で突然のクイズ。ここまで変な人だとは思わなかった。
「わたしを困らせたいからでしょ」
ため息を吐きながら答えると、蒼佑は「ぶぶーっ」と胸の前で腕を交差させた。そんなキャラじゃなかった気がする。
「千佳ちゃんに見つけて欲しいから」
プッと遠くの方で車のクラクションが鳴った。わたしは蒼佑の顔をマジマジと見る。
「昔さ、みんなでかくれんぼしたの覚えてる? 僕は結構かくれんぼが得意で、大抵の鬼が僕を見つけられないのに、千佳ちゃんが鬼になった時だけは一番最初に見つかるんだ。それがなんでかすごく嬉しくてさ。千佳ちゃんしか僕を見つけることができないっていうのが特別な気がして、いつの間にか千佳ちゃんに見つけて欲しいがために隠れてたんだ」
意気揚々と解説をしてくれるが、わたしには意味がよく分からなかった。
「ごめん、要するに、どういうこと?」
「つまり、要するに、僕は千佳ちゃんから離れたくない」
ここまで言ってくれれば「どうして」などと野暮な質問はしない。蒼佑がストレートにそう言うので、わたしも本音で答えた。
「わたしもね、こっちに来てからもしこの街に蒼佑がいたらここにいそうだな、とか、あそこに隠れてそうだなとか、ずっと考えてた。わたしも蒼佑がいないとダメみたい」
苦笑すると、蒼佑はわたしの手を取った。
「近くで僕を探してほしい。千佳ちゃんは僕から離れないで」
わたしはギュッと手を握り返した。
「あんまり遠くに行かないでね」
そして明日もわたしは蒼佑を探す。
「ちょっとあんた今どこにいるの⁉」
end.
最初のコメントを投稿しよう!