3.事故物件・中編

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『いおりーん、体調大丈夫? ちょっと仕事の手空いたから様子見に来たんだけどー……』 インターフォンのモニターに映っているのは伊織のマネージャーの男だった。確か伊織は「三浦」と呼んでいた。狗飼が部屋のドアを開けると、伊織が出てくると思っていたであろう彼はひどく驚いた顔をした。 「あれ、君今朝のイケメンく……うわっ」 思わず胸倉を掴んで室内に引っ張り込んでしまった。彼には聞きたいことが山ほどある。 「え、あれ? いおりんは? なんなの君達。どういうこと」 混乱する三浦に、絢斗が場を濁すように「お邪魔してまーす」と言った。 「三笠さんは、今どこにいるんですか? 撮影じゃないんですか?」 「あー……いおりん、今日の撮影で色々あったみたいで、家に帰されたらしいんだよね。いや、ていうか君達ほんと、どうやって入っ……」 「! 今日は三笠さん、他に予定は?」 被せるように聞くと、三浦はその剣幕に押され、追及を諦めて言った。 「ないない。今日の予定は撮影だけ。体調悪そうだし、だから家にいると思ったんだけど……電話も全然出ないしさー……いおりん基本レスポンス早いのに」 嫌な予感が、ざわざわと背筋を這い上がってくる。 「……四ノ宮という男を知っていますか?」 「えっ……」 三浦はギクッと肩を揺らした。なんでその名前を、という表情だ。 「知ってるんですか? 三笠さんと、どういう関係ですか? 今、その男はどこにいますか?」 「いや、ちょっと待ってよー。急に矢継ぎ早になんなの君。マジでいおりんとどういう関係? ストーカーじゃないよね?」 狗飼はまどろっこしさを感じながら溜息を吐き、机の上に先ほど時計から取り出した盗聴器を並べた。 「……これ、この部屋に仕掛けられていました。おそらく、四ノ宮という男がやったものと思われます」 他にも、落書きされ、セリフが差し替えられた台本や睡眠薬と入れ替えられた謎の薬物を見せ、さらに先ほど管理会社から言われたことを話すと、三浦はこれ以上ないほど青ざめた。何か心当たりがありそうな、そういう顔だった。 「……この番組って佐伯Dの前に四ノ宮Dが担当してたんですか?」 「いや、話を持ち掛けてきたのはプロデューサーだったからDが交代してたのは俺も初耳。四ノ宮Dが関わってるなら、いくらなんでも引き受けないよ。でも確かに……こういう企画でいおりん名指し指名っていうのでちょっと変だなって思ってたけど……」 「四ノ宮について、何か心当たりあるなら教えてください」 早く、と胸倉を掴むと、三浦は「わかったわかった」と嗜め、言いにくそうに話した。
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