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「飛鳥井くんとLament組んだばかりの頃、いおりんすごく方向性に悩んでたんだよね。子役時代と比べて可愛くなくなったとか色々言われて、相方はどんどん人気でるしで。でも、当時キー局でやり手ディレクターって評判で、もうすぐプロデューサーになるって言われてた四ノ宮Dに、いおりん随分気に入られて……プロデューサーになったら単独レギュラー番組持たせてあげるとか言われて浮かれちゃってたんだよねえ。〝これからは俺の天下だ〟とか調子乗って、大喜びして四ノ宮Dとしょっちゅうご飯行ってて……で、まあ……クスリ盛られて、すごく、危険な目に遭って。飛鳥井くんが気づいて最悪の事態はかろうじて免れたけどその件で、プロデューサーに昇進を目前に四ノ宮Dはキー局から地方に飛ばされて、いおりんのこと逆恨みしてるっていう噂はある……けど、まさかそんな……盗聴器とか……」
いやでも、ありえないことはないと三浦は唸った。
「四ノ宮の連絡先は?」
「……佐伯Dに聞いてみる」
三浦の電話で、四ノ宮はすでに退社し、音信不通で消息が分からないということだった。伊織にも電話をかけてもらったが、留守電になってしまうと言う。
「どうする? 警察呼ぶ?」
絢斗が、いよいよ青ざめた顔で言った。
「ちょっとちょっと、警察はやめてよ~~。ちょっと買い物とか出かけてるだけかもしれないし。週刊誌載っちゃったらどうすんの」
この非常時に危機感のない三浦に苛立ちながらも、警察を呼ばないという点では、狗飼も同意した。
「警察は、長い調書だけ取られて時間の無駄だ。子供ならともかく、成人が数時間家に帰ってこなかったからって捜索はされないし、ストーカーも……見回りぐらいだろ。むしろ俺達が不法侵入で捕まる。そんなことをしてる間に、三笠さんがどうなるか……」
「そうだけど……でも居場所が分からないのに、どうするんだよ」
その時、三浦がふと言った。
「でも本当に、四ノ宮Dなのかな……」
「……四ノ宮の他に心辺りあるんですか?」
「いや、その、四ノ宮Dがどうこうっていうより、一つ気になることがあって。長年、いおりんにずーっとファンレターを送ってくれてた人がいてさぁ。その人Lament解散してからもずっと応援してくれてたんだけど、ここ最近、内容が変になっててね」
特に最近はあまりにも気味が悪いから、何かあった時のためにコピーを控えていると言って三浦はそれを鞄から取り出した。
狗飼は渡されたその手紙の文章に目を通し、やがてハッとした。
「……あの、このグラビア撮った場所って分かります?」
鞄から、この間買った雑誌の、伊織のグラビアの切り抜きを張ったスクラップブックを見せると、三浦は「え、君もしかしてガチのいおりんファン?」と戸惑いながら頷いた。
「ああ、うん、分かるけど……」
「ここに連れて行ってください! 今すぐ!」
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次回は伊織視点です!
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