くるみの木のパン屋さん〈1話〉

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 おく(ふか)い森の中に、『くるみの木のパン()』がありました。  そこでは、くるみおばさんが、どうぶつたちにパンを()ってくらしていました。  このパン()さんは名前(なまえ)のとおりに、くるみの木でできています。  その店で、くるみおばさんは今日も、パンを()ります。  ちょうど今、くるみおばさんは、()けたパンを店のたなへ、ならべていました。 「ああ、今日もいろいろなパンが()けたわ。かぼちゃつゆ草パンに、たんぽぽミルクパン……」  くるみおばさんはめがねをかけると、いつものように、パンの数を数えます。  できたてのパンはきつね色にこんがり()けていて、こうばしい(かお)りに、ことりたちがよってきそうです。  くるみおばさんは、とびきり元気(げんき)な人です。  ちょっとおこりっぽいところや、うっかりしたところもあるけれど、やさしくて、パン作りのうでは森一番(いちばん)。  できたての、ほかほか、あつあつのおいしそうなパンを見ると、(わら)ってしまうのがくせでした。  上手(じょうず)にパンを()けて、それを食べるみんなのよろこぶ顔を思いうかべると、うれしくなってしまうのです。 「ふふっ……」  いつものようにくるみおばさんは(わら)うと、店のドアのふだを『いらっしゃいませ』に変えました。  その時です。  ジリリリリーン!  店の電話(でんわ)が、ひびきわたりました。
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