30人が本棚に入れています
本棚に追加
おく深い森の中に、『くるみの木のパン屋』がありました。
そこでは、くるみおばさんが、どうぶつたちにパンを売ってくらしていました。
このパン屋さんは名前のとおりに、くるみの木でできています。
その店で、くるみおばさんは今日も、パンを売ります。
ちょうど今、くるみおばさんは、焼けたパンを店のたなへ、ならべていました。
「ああ、今日もいろいろなパンが焼けたわ。かぼちゃつゆ草パンに、たんぽぽミルクパン……」
くるみおばさんはめがねをかけると、いつものように、パンの数を数えます。
できたてのパンはきつね色にこんがり焼けていて、こうばしい香りに、ことりたちがよってきそうです。
くるみおばさんは、とびきり元気な人です。
ちょっとおこりっぽいところや、うっかりしたところもあるけれど、やさしくて、パン作りのうでは森一番。
できたての、ほかほか、あつあつのおいしそうなパンを見ると、笑ってしまうのがくせでした。
上手にパンを焼けて、それを食べるみんなのよろこぶ顔を思いうかべると、うれしくなってしまうのです。
「ふふっ……」
いつものようにくるみおばさんは笑うと、店のドアのふだを『いらっしゃいませ』に変えました。
その時です。
ジリリリリーン!
店の電話が、ひびきわたりました。
最初のコメントを投稿しよう!