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家を出てからしばらくたつと、見えていた足の数が次第に増えていく。複数人でゆっくり進むために、なかなか進まない足。それを追い越すのはさすがに危ないので、我慢してついて行く。そんな僕の隣を足早に追い抜かしていく足。  前にいた足が、僕のことを不審に思ったのか、少し立ち止まった。つま先がこちらを向いたので振り返ったのだろう。そして、少し話し声がしたかと思うと、踵を返し足早に進んでいく。足を見るだけでその人の考えていることがなんとなくわかるようになってしまった。傘をさした人物についてこられたくはないと思ったに違いない。  家から歩いて十五分。小さな坂を上るころには、見える足は全て白い靴になっていた。この坂を登れば僕の通っている中学校に着く。 「おはよう!」 「おはようございます」  校門に立っている先生たちの声を通りぬける。挨拶の声が僕の方に向かってやって来たが、僕は返事をすることができない。話そうと思うと喉がきゅっと絞られるような感覚になるからだ。さすがに挨拶をしなかったからと言って怒られることはないけれど、いつも申し訳ない気持ちになってしまう。傘の柄を両手でぎゅっと握って、できるだけ小さく縮こまり、こそこそと進んだ。
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