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ジョシュアを包み込むように絨毯の上に座り暖炉の炎を見ていると、味わったことのない安心感と多幸感がさらに僕を包んだ。
――――雪かきをしたところで、急患以外は誰も来ないだろう。ジュリーに明日は来なくていいと言えばよかった。
ジョシュアの金色の髪から、いい匂いがしてくる。自分も同じものを使っているのに、彼は特別なのだろうか。僕は鼻の頭を彼の髪にこすりつけた。
「何してるの。イーサン、変なの」
「変じゃないよ。いや、変かな」
とりとめのない話をしながら、僕はふと薪を運んでいた時のことを思いだした。そうだ、あの時感じた違和感。
「ジョシュア、今日はどこかに行ってたのか?」
ジョシュアがここにやってきて三週間が経っていた。最近では近くの市場まで買い物に出ることもある。
「どうして?」
「薪を取りに来た時、外套と外用の靴を履いていたからね」
「わかっちゃったんだ」
「隠してたのか?」
「いいや、まさか」
ジョシュアはパンが食べたくなったのだと言った。それで市場に行って少し買ってきたのだと。言われてみれば、食材が少し増えていた気がする。
食材と言えば、今日来るはずのサマンサが来なかったのを思い出した。ジョシュアのことで頭がいっぱいだった僕は今頃それに気づいた。
「そうか。今日は何故かサマンサが来なかったから、ちょうどよかったよ」
ふふふ、と目を細めてジョシュアが笑った。
「ジョシュアはロンドンから来たんだね」
「何故?」
「今朝、自分で言ったよ。『ロンドンではあんな馬車は見ない』って」
そうか。とつぶやき、ジョシュアは僕の膝の中から脱け出した。そしてすぐ隣のクッションの上に横たわる。
「そうだよ。俺はロンドンから来たんだ。あの日、乗り合い馬車に乗って、ここに来た」
「あんな時間に?」
「着いたのはもっと早い時間だよ。ホントは、明るいうちにイーサンのところに来る予定だったんだ」
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