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この世界は僕とジョシュアのような関係を歓迎してはくれない。英国においては御法度だ。大ぴっらに彼を愛していると公言するなどできやしない。だが、それを彼はどこまでわかっているか。
「イーサンが黙っていろというのなら、俺はそうする。俺みたいなのが牢屋にぶち込まれるってのはわかってる。それで引っ張られた仲間もたくさんいるから」
ジョシュアは今年18歳になったという。次に捕まったら、それはもう保護ではなく逮捕になるんじゃないだろうか。
だからあの時、腹を刺されたときここに逃げてきたのは賢明だったかもしれない。子供の男娼は強制されてのこととなり、大きな罰を与えられることはないだろうけれど。
――――どのみち、あの世界でしか彼らは生きられない。教育とチャンスを与えてやらなければ、また裏道に戻るだけだ。
「明日は自分の部屋で寝るんだよ」
「なんでだよ」
クリスマスイブの前夜。いつものように僕のベッドのなかで、子猫のように背を丸めて眠るジョシュアにそう言った。
「明日は姉たちが来るからだよ。まさか一緒に寝ていますと言うわけにはいかない」
「う……ん。仕方ないね。世を忍ぶ仲だから」
ジョシュアは聞き分けよくそう言った。少し寂しそうな顔を見せて。
「そんな言葉どこで覚えたんだ?」
「イーサンの本棚にあった本からだよ」
「そんな悪書があったかな」
「聖書だよ」
小馬鹿にしたような目で僕を見ると、ジョシュアはくすくすと笑いだす。
「まったく……さあ、もう寝よう。明日の午前診療が終わったらしばらく休みだ。しっかり仕事納めしないとな」
「イーサン」
ジョシュアは僕の胸の上に体を乗り上げ、キスをする。
「お姉さんがいる間、俺とは他人のフリをするんでしょ?」
「そうだな。そうなるな」
「我慢できるかな」
「してもらわないと困るよ」
「もしお姉さんが俺のことを追い出せと言ったら、どうするの?」
ジョシュアは不安げにそう問いかけた。
「姉はそんなことを言わないよ」
「でももし、そう言ったら」
「追い出すものか。誰がどう言おうが、僕はジョシュアとずっと一緒にいる」
「約束する?」
「約束する」
ジョシュアは嬉しそうに微笑むと、僕の寝間着の釦を一つずつ外し始めた。
「こら、寒いじゃないか」
「大丈夫だよ。俺が暖めてやるから」
「ふふっ。どっちが」
僕は体を起こし、入れ代わりに彼をマットに沈める。そして、自ら寝間着を脱ぐとジョシュアの首筋に唇を這わす。細い手首を掴んで抑えると、思考を溶かす吐息が聞こえた。
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