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思い出した。
このジョーカーは俺に似ている。
いや、俺がこのジョーカーに似ているのか?
俺は自分の家柄を憎んでいた……金を憎んでいた。
そんなものは燃やしてしまうジョーカーに憧れているのか?
ルックスも要らない。
自らの顔を傷つけ、恐ろしい装飾を施すことでジョーカーは開放されるのだ!
俺の中の本物の悪意を見せつけてやろう。
あいつにも、あいつにも、あいつにも……。
俺の本当の姿。
本当の悪?
いや、まだ俺はジョーカーになれちゃいない。
こんなものは只の悪役、ジョーカーじゃあない!
本物のジョーカーの悪意の奥にあるものは……おそらく絶望だ。
人間に対する圧倒的な絶望……それこそがこの強烈な悪意の原動力。
そうだ……化粧をしてみようか?
作中のジョーカーも自分でしたはずだ。
すると鏡の中の男が突然わらいだした。
「……ふふふ、ふふふふふふ、、、はははははははははは!!!」
「……だれだ…おまえは……」
「俺か?俺は…アンドリューさ」
「嘘をつくな!俺は……俺の顔はそんなんじゃない!」
「はははははは……ひどいなぁ、自分でやったのにぃ」
「はぁ?……何言ってるんだ、おまえは…誰だ?」
「俺か?……知ってるだろ?」
「いや、聞きたくない!」
「いいから聞けよぅ」
「黙れ!」
「俺の名は…」
「黙れぇ!」
「I am...」
「黙れぇえぇえええええ!」
パリーーーーン
大きな鏡が割れてそれを為したであろう木製の椅子の足がひとつ折れてダラリと垂れ下がっていた。
ドンドンドン
「どうなさいました?アンドリューさん!」
流石の物音にホテルの従業員が様子を見に来たらしい。
「……なんでもない」
「……大丈夫ですか?」
「……あぁ、もちろん………大丈夫だ」
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