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「ねえ、僕のママ……今どこにいるの?」  まだ幼さの残る少年は、私を見上げて問う。  私は、彼の小さな冷たい手をぎゅっと握ったまま、何も言うことができなかった。  答えられない私から目を逸らし、少年は唇を噛み締める。 「ねえ、……また、ママと暮らせるよね?」  不安げな顔の彼を、しゃがみこんで抱きしめた。  この子に、少しでも幸せな世界が訪れますように。そう願わずにはいられなかった。  今年初めての雪が、はらはらと空から落ちる、冬のある日のことだった。
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