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事の始まりは、北風の吹き始めた11月初旬のことだった。
私は下町の小さなパチンコ屋に勤めている。かれこれ4年ほどアルバイトとして働いているが、駅からも遠く、客の入りも良くないこの店が、何故まだ潰れないのか未だにわからない。
毎日来るのは、年金暮らしの近所のお年寄りくらいだ。あとは会社帰りのやつれたサラリーマン。
だから、その女性は店内でも目立っていた。
派手なワンピースの上に、型落ちしたブランド物のコートを羽織っている。
金色に染めた長い髪は、頭頂部が黒くなってプリンのような色合いになっていた。
音量も光量も最大にした台を、イライラと貧乏揺すりをしながら打っている。
なかなか当たらないのか、ボタンを壊れそうなほど連打しては、周りの客に睨まれていた。
やな客だな。そのうちこっちが文句言われそう。
そんなことを思って彼女の後ろを通り過ぎ、ふと窓の外を見た時。
まだ小学校低学年くらいだろうか。ボロボロのランドセルを椅子代わりにして、寒さに震えながらしゃがみこんでいる男の子が目に入った。
嫌な予感がする。慌ててインカムを入れて上司に報告した後、私は店の外へ駆け出した。
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