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「ねえ、君……一人?」  膝を抱え、薄いコートを体に巻きつけた男の子を驚かせないように、そっと近づいて声をかける。  私の声に、少年はハッと顔を上げた。鼻の頭が赤い。一体いつからこうしていたのだろう。  見知らぬ人とは会話してはいけない、と言われているのか、警戒したような視線を私に向ける。 「ごめん、私はここのお店で働いてる店員なんだ。君が外で寒そうにしてるから、お父さんとお母さんはどうしたんだろうと思って」  しゃがみこんで目線を合わせてそう言うと、ほんの少し警戒の解けた顔をした後、俯いた。 「パ……お父さんは、いない」 「ママは?」  彼は、気を抜くと今にも逃げてしまいそうな野良猫を彷彿とさせた。 「ママは……お店の中」  小さな声でそう言った後、ぱっと顔を上げて今度は逆に私に質問した。 「ねえ、ママ今どこにいた? 僕を置いて帰ってないよね?」  話す度に白い息がふわりふわりと浮かんでは消える。 「ママって、ワンピースを着た、金髪の人のこと?」 「そう。よかった、まだいるんだ」  少年はほっとしたように笑顔を浮かべた。 「ママ、お金稼いでくるから僕にここで待ってろって言ったんだ。僕も入りたいけど、まだ子供で入れないからダメって。すぐ終わるからって」  私は顔を顰めた。パチンコがすぐに終わるわけがないことは、経験者なら誰でもわかる。  おかしい。普通、こんな寒い外に子供を放置してパチンコを打ったりなんかしない。
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