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「すみませんでしたぁ」  プリン頭にワンピースの女は、私とも店長とも目を合わせずにそう言い放った。  横顔だとわからなかったが、だいぶ若い女のようだ。20代前半だろうか。 「いえいえ、お気になさらず」  店長は深々と頭を下げた。 「ですが、お子様を寒いお外でお待たせして打たれるのは、虐待にもなりかねませんので……お気をつけくださいね」  微笑んだまま店長はそう言った。女ははぁい、と投げやりな返事をする。  その次の一言に私は思わず目を見開いた。 「で、今確変中なんでそれ終わるまで見てもらってても良いですかぁ?」  ――信じられない。  この期に及んでなお、自分の子よりもパチンコを優先するのか。 「お言葉ですけど」  食ってかかろうとした私を、店長が手で制した。 「かしこまりました。本日だけはこちらでソースケくんを見ておきます」  にこやかにそう言った後、すっと笑顔を消して店長は続ける。 「ですが、今後はこちらで見るということはできませんので、何卒ご了承下さいませ」  一瞬怯んだような顔をした女は、何も言わずにぺこりと頭を下げて店内へ戻って行った。
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