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「翔ちゃんは此処には居ないのかもしれないね」
そう言うと千代婆ちゃんは愛嬌たっぷりの
クシャッとした笑顔を覗かせた。
翔太の小学校の親友である悠介がクラスで
イジメられている。
助けたいけど自分までイジメられるのが怖い…
だから仕方なく加害者側にまわってしまう。
大好きな祖母である千代婆ちゃんに
その事を打ち明けると予想外の返答が返ってきた。
「此処に居ないってどういう事?
僕は婆ちゃんの目の前に居るけど」
ヒャハハといつもの個性的な笑い声を響かせたあと
千代婆ちゃんは座っている翔太を後ろから
抱き締めて両手で目隠しした。
婆ちゃんのほんわりした体温を背中で感じると
翔太は悩みが少し和らいだ様な気がした。
「翔ちゃんが此処に居ないって言ったのは
身体じゃなくて【心】の事だよ
人はね自分の本当の気持ちが分からなくなると
心と身体が離れてしまって自分の居場所が
分からなくなるんだよ。良いかい翔ちゃん。
目を閉じたままゆっくり
『本当に自分はこれで良いの?
本当の自分はこれで良いの?』って心の中で
自分に聞いてごらん」
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