エデンの肥溜め

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まるでロボットの軍団とそれを率いる親玉の悪い悪い科学者、という60年代SF黄金期に帰ってきたかのような構図だった。50人ほどのロボ人間どもは全員そろいの制服を‐黒革のロングコート、黒シャツ、黒タイ、黒の軍パン、黒の編み上げコンバットブーツ‐たなびかせながら、一堂に読めない表情を振りまいている。先頭の糞博士は三人いて、前から二番目は若い男女、最前列を小柄な老人が偉そうに、しかしやたらとふらふらしながらふんぞり返って(どう見ても腰痛持ちが腰を伸ばしているようだ)ステージに立った。 雛壇に老人がつくと、老人のすぐについていた二人は素早くその後ろに陣取り、赤い長髪の若い男が「整列!」と叫んだ。工業プロダクトのようにきびきびと歩いていた人間ロボ軍団は規律正しい動きで参列に並ぶ。全員が揃いのたたずまいをして、後ろに手をまわした休めの姿勢をとるまで10秒ほどしかかかっていない。少なくともちょっと前のNYPDよりはずっと命令系統がしっかりしているのかな、と来賓たちはしげしげ考えた。 しかしそれでも、ステージ前方の三人の見てくれが到底、暴力的資本主義にどっぷりと浸かったならず者には見えないからだ。もしかしたら、それは思い込みなのだろうか。軍隊、警察、ギャング、格闘家、その他到底表には出られない商売……そういった市井の人々には到底関わりのない仕事をしているような者特有の、部外者をどこか見下したような雰囲気はない。ステージの下に立ち並ぶ社員たちも戦闘服は着ているがやはりどこか、イメージと違う。年寄りと、若い男女。だが三人が三人、いまにも人を殺したくてうずうずしているという雰囲気ではない。それどころか、髪を整えさせてスーツを着せればそこらのサラリーマンに見えるだろうし、コンビニの制服を着せればただの店員に見えるだろう。それほど、暴力や流血とは無縁に見える。市のお偉方や資産家たちは訝しみながら、確かに規律には従順だが本当にこいつらに治安維持を任せられるのか?という懸念と考えようによっては簡単に懐柔して何らかの使い物になるかもしれないな、という二つの考えが頭をよぎっていた。
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