66人が本棚に入れています
本棚に追加
銀狐は冷え冷えと彼らを見回す。
精鋭の使役妖の群れに、十人がかり。そしてこちらは妖力を封じられている。
「行けぇ!」
号令が掛かった。
使役妖たちの咆哮が轟き、軍刀で花茎を薙ぎ払って男達が飛び掛かってくる。
銀狐は清良子の糸に爪を掛けた。
この玉の緒を断てば自由だ。尾の一閃、そして頭を握って潰し、心臓まで踏み抜ける。
だが。
きつねさまの、かぞくにして。
旦那様とお呼びしたかっただけ。
清良子は幸せです。
無垢な笑みが、斬り捨てられた花の向こうに蘇る。
清良子よ。だから俺は恐れたのだ。
おまえを傍におけば、俺はきっと弱くなる。
おまえのせいだぞ、清良子。
無抵抗の銀狐の胸に、十の針が突き立った。
最初のコメントを投稿しよう!