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「うっ、うそおぉおぉ」
驚いた。お母さんはお父さんより強い。それじゃあ今度は私のパンチをお見舞いしてやる。
「はぁ、はぁ。るっ、瑠奈? あんた自分が何をやっているかーーー」
「お母さん? 組手の時は喋っちゃいけないってお父さんが言っていたよ?」
お母さんの正面で腰を落として、右パンチをお母さんのお腹に目掛けて打った。するとお母さんのお腹に穴が出来た。お母さんは口から何か液体を吐いて後ろに倒れた。
「やっ、やったぁぁぁ」
何だろう、すごく気持ちがいい。こんな感覚は初めてだった。手に残る暖かい感触。とてもさっぱりした気持ちに胸が熱い。
見上げるとさっきより大きな丸い光が強くなっている気がする。見ていると落ち着くし、全身から力が湧いてきた。不思議な丸い生き物かな?
「……もっと組手したいな」
この山を降りたら何があるのだろう。今までお父さんとお母さんには山を降りちゃいけないって言われていたから、すごい楽しみ。明るい時間は分からなかったけど、よく見たら遠くに灯りが点いている建物はいっぱいありそう。あそこに行ったら、何があるのかな。人が多くいそうな気がする。
私は山を降りる事にした。
もっといろんな人がいて何だか楽しい遊びがありそうだから。
【了】
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