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エピローグ
「さわわです。やっすーです。さわとやすチャンネルへようこそ」
いつものように佐和子と泰文が元気よく登場し、さわとやすチャンネルがスタートする。
「えっとですねぇ、夏頃から始まりました心霊スポット巡り10選なんですが、いよいよ最後の10箇所目。私達の母校にある『旧校舎』だったんですが……諸事情がありましてお蔵入りとなってしまいました。本当に申し訳ございません」
「申し訳ございません」
佐和子と泰文が深々と頭を下げると同時に俺達も同じ様に頭を下げる。
何故こうなったのか。
それはいくつか理由があった。
一つは旧校舎で一番の怪奇現象は実際のノブと鏡の中のノブの動きがズレていたシーンだった。
しかしそのシーンを使うならノブが顔出ししなくてはならなくなるのだ。
そしてノブの顔出しをしないならその現象を上手く伝えられないという事もあった。
更にもう一つはメンバーに怪奇現象が降り掛かってしまった事だ。
やはりその様な現象まで動画としてあげてしまうと、『不謹慎だ』『やらせじゃないのか?』といったコメントが増えかねないという結論に至った。
そういった様々な理由から皆で話し合ってお蔵入りを決めたのだ。
正直、せっかく撮影も終えていた訳だし、最後の10箇所目という事もあって悩んだ中の苦渋の決断だった。
しかしこの決断が後日、俺達の予想に反する反響を呼んだ。
コメント欄には
『最後の動画がお蔵入りって、一体何があったんだ!?』
『旧校舎には一体何がいたの?』
『やばい。旧校舎の動画が気になり過ぎる』
『今までのD団地やG病院以上に旧校舎はやばかったのか?』
等のコメントが溢れる事となった。
この反響を受け、俺達は泰文の家に集まっていた。
「いやぁ、まさかの反響だね」
佐和子が頭に手をやりながら満面の笑みを見せる。
「本当だね。まぁ結果オーライって所かな」
「ここまでたいした活躍なかったけど最後に良い仕事したね」
美優が佐和子に同意してると、朱美ちゃんがノブの肩を叩きながら笑って労っていた。
「まぁそういう事で心霊スポット巡り10選も一応終わったんだけどさぁ、……もし良かったらこれからも一緒に動画撮影続けてくれないかなぁ?」
佐和子がやや上目遣い気味に皆を見渡す。
俺達は皆、顔を見合わせた。
「まぁ最後は不完全燃焼って感じだったしねえ」
「俺ももう少し爪痕残したいしな」
ノブと朱美ちゃんが笑って返していた。
「私もいいよ。華は多い方がいいだろうし」
「俺もここまで来たらもう暫くは付き合うよ。それにここで俺だけ外れたらケンケンに何か問題があるって思われそうだしな」
美優がおどけてみせて、俺も軽口で続いた。
「おい、次はもう心霊スポット巡りじゃないよな?」
「え、私は心霊スポット巡りリベンジでもいいよ」
「ちょっと朱美。ノブ君が目丸くしてるから」
ノブの表情は少し引きつっていたが皆での談笑はそのまま夜まで続いた。
結局次は心霊スポット巡りの打ち上げも兼ねて、年末にちょっと温泉旅行にでも行こうかという事になってその日は解散となった。
「暫くあいつらに付き合う事になったけど良かったのか?」
「はは、勿論。皆で色んな所に行けるのも楽しいしね。まぁ気楽に行こう」
帰りの車内で一応美優に確認してみるが美優は楽しそうに笑っていた。
――12月
休日に部屋で美優とくつろいでいると突然美優のスマホの通知音が鳴った。
「あ、志保からLINEだ。なんだろう?」
そう言って美優が確認する。
『やっほー。前に言ってた年末の映画撮影なんだけど、関東地方のTって言う温泉街で撮影する事に決まったからね。勿論来てくれるよね?ちょっとした秘湯らしいから旅行も楽しめるよ』
「ああ、そうか志保が前に言ってたやつだ。年末は動画撮影あるから無理だよね。……あれ?関東地方のTって……」
美優も気付いた。
関東地方の温泉街T。
そう、ここは一週間前に佐和子から
『年末の打ち上げ旅行は関東の方にあるTって言う所にしたから』
と連絡を受けたのだ。
「……え?どうしたらいい?」
美優が眉を八の字にし、助けを求める様にこちらに笑顔を向ける。
もう既に平穏に終わる様な気がしないのは俺だけじゃないはずだ。
――終幕
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