1人が本棚に入れています
本棚に追加
「今どこにいますか?」
彼女からの電話で、突然そう聞かれた。
「……それは言えねえな」
言えない事情がある。
下手に場所を伝えて、ここに来られたら困るのだ。
「どうしても言えませんか?」
「まあな……。どうしてそこまで知りたがる?」
俺はそう問う。
「あのですね、私の目の前に見知った顔の男性がいるんですよね。そしてその隣には、私が知らない女性がいるんです」
「…………は?」
なぜ、わざわざそんなことを電話で報告する?
知り合いの男の隣に知らない女がいたから、何だと言うんだ。
「それでですね。何と、その男性は私の彼氏なんですよね」
ゾクリ。
背筋に悪寒が走った。
「隣の女性と、腕なんか組んじゃって。これって浮気なんですかね~」
声がダブって聞こえた。
電話越しと、すぐ近くから。
俺は声がした方に視線を向ける。
般若のような顔をした彼女が、そこに立っていた……。
最初のコメントを投稿しよう!