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熱い顔をごしごし擦りながら教室に入った時、ポケットに入れていたスマホが振動した。
取り出して見ると、そこには『新着メッセージ:本田』の文字。
驚いてスマホを落としそうになり、慌ててしっかりと握り直してメッセージを開く。
『急にメッセージ送ってごめん。あの本、俺もめっちゃ好きなんだけど読んでる人見たことなくて。つい送っちゃいました』
文末には舌を出した、悪戯っぽい顔の絵文字がつけられている。
『今度また、話ができたら嬉しいです』
最後はそう締め括られていた。
思わず画面を胸に伏せ、あたりを見渡す。にやけた顔とこの文面を誰かに見られたら、穴があったら入りたいどころの騒ぎではない。
なるべく落ち着いて自分の席に座り、ゆっくりと返信を考える。
『本田くん。メッセージありがとう。私もあの話、好きです。さっきはなんか、態度悪くてごめん。あんまり本田くんと話さないから緊張しちゃいました(笑) 私も、話ができたら嬉しいです』
考えに考えて、30分以上推敲して送信した。
別に本田くんが好きだとかそういうのじゃない、はずだ。グループが違いすぎるし、私なんてまず相手にされない。
きっと返事がすぐに来ることはないだろう――そう思った時。またスマホが振動した。
「おわ!?」
思わず声が出る。教室にいた周りのクラスメイトが、訝しげな視線を向ける。すみません、と頭を下げつつスマホを見る。
『よかった、急に話しかけたから嫌われたかと思った。じゃあまた、あの屋上の階段にいてくれる?話しに行く』
ばん、と思わずまた画面を机に伏せた。ついでに自分も机に伏せる。
ちょっともう、本田くん――恋愛耐性のない女子に対してぐいぐい来たら、好きになっちゃうじゃないの!
うわーっと叫び出したいのをぐっと我慢して、顔を上げた。すると、ちょうど教室に戻ってきた本田くんと目が合う。
恥ずかしそうに微笑まれ、私も曖昧に笑みを浮かべてまた机に突っ伏した。
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