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「山岡さん、待った?」
次の日から、本当に本田くんは屋上に来るようになった。律儀に毎回「待った?」と聞いてくる。モテるんだろうな、と心のどこかが少し疼いた。
いやいや、私は好きとかではなく本の話ができる仲間ができたから嬉しいだけであって――と言い訳するも、話す度ににやける顔は隠しきれない。
「ここのさ、屋上で主人公が告白するとこ。俺本当に好きでさぁ。『君がどんなに自分が嫌いでも、周りがどんなに君を嫌いでも、関係ない! 俺は君が好きなんだ!』って……何回読んでもグッとくるよな」
ぱらぱらと自分の本を捲って、そのページを指さす。
「えっと、何ページだっけ」
「108ページ。好きすぎてすぐ紹介できるようにページ数覚えてんだ、俺」
照れ臭そうに頭を掻く。そんなところも意外な一面で可愛い――と思いかけて頭を振った。私なんかが陽キャのグループの男子にそんなことを思うなんて、おこがましいに違いない。
その時だった。
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