Don't ask why…

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俺はお気に入りのタキシードと蝶ネクタイで相手を待った。台本読み(顔合わせ)の日にちと時間、場所は封筒の中身に書いてあったから来るはずだ。 遊具がないから公園…ではないか。真ん中に噴水がある円形の広場かな。地面には煉瓦が敷き詰められている。花壇もあって小洒落た感じだ。待ち合わせにはもってこいの場所だな。 円に沿って一定の間隔で並べられたベンチに座ってしばらく待っていると彼女はやってきた。栗色の髪をポニーテールにしてピンクのブラウスにデニムを履いている。 何故だか分からないが、俺の待ち人はあの子に違いないと思った。予想通りこちらに近づいてくる。そして小さく声をかけてきた。 「あの…赤い封筒の方、ですか?」 そっと顔を覗き込み、肩から下げているバッグから俺が持っているのと同じ封筒をちらりと見せる。 何だ?このくすぐったい感じ。風に乗って甘い匂いがする。俺は彼女から目が離せなくなった。時間が止まった様な気がした。 やけに暑いな。高揚感?いや、緊張感だろ。初対面だからな。自分の中にある謎の感情を無視して俺は会釈を返した。 「はい。そうです。初めまして」
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