いつも隣りにいてほしいのは

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ライアンは球場外の、誰もいない駐車場に一人立っていた。アレックスからもらった、3塁側ダグアウト上の座席チケットを見つめながら。球場からは、まばゆいばかりの光が放たれ、夜空を煌々と照らしている。 「行きたいさ、行きたいけど、最近はいつもピートたちも一緒に行ってたろ?あいつらに抜けがけしてるみたいで、悪くてさ。こんないい席」 (だから!あいつらにはもう話してあるんだよ!二人きりになりたかったから、協力してもらったの!奴らはもうとっくに外野席に陣取って酔っ払ってるさ!なのに、あいつらに悪いから来られないって?!まったく……お前らしいよ。) 「そうだな、確かにあいつらには気の毒かもしれないけど、きっと分かってくれるって。覚えてるだろ?俺たちの約束」 「……ああ。もちろん覚えてるとも」 あの日。ブロンテーズが一度だけ、リーグ優勝争いに食い込んだときがあった。試合後、生まれて初めてのビールを飲みながら、ライアンと約束した。もし今後また、ブロンテーズがこんな風にポストシーズンまで進めるようなことが起きたら、二人で一番いい席を陣取って、勝利を見届けようと。 (そしてお前はあの日、俺にハグして……俺の首筋にキスした。2回も。覚えてるかよ?普通、男友達の首筋にキスなんかするか?!お前のせいで、俺は……) 愉快そうなライアンの声が聞こえてくる。 「あの日はゲーゲー吐いて、次の日ひっでえ二日酔いで、天国の後の地獄って感じだったな」 アレックスは絶望して頭を抱える。傍らを、老夫婦らしきカップルが通り過ぎる。豊かな金髪をなびかせて、化粧も派手なご婦人の、香水の匂いが鼻を刺激する。 ライアンは、球場の周りをまわるようにして、ゆっくりと歩く。これまで何度も通った場所。 「なんだか、信じられないよな、こんな日が来るなんて」 「だろ?だから早く来いよ」 「……俺たちがガキの頃から、ずっと見て来たもんな。どんなに弱いときでも、見捨てなかった。球場に通って」 「ああ」 そうだ。14連敗したときだって、7点差をひっくり返されたときだって、俺たちはチームを嫌いになんかならなかった。そんなときでも希望は失わなかったし、だからこそ、たまにしか味わえない勝利の喜びはひとしおだった。 「そう、うちのチームはいつも勝率五割を行ったり来たりしてるような弱小だったけど、今年は違う」 「だな」 ライアンは、球場の外の壁を手でなぞりながら歩いていた。そうすることで、今夜の興奮が肌で感じられるような気がして。 アレックスが続ける。 「お前も分かるだろう?俺たちがずっと見守ってきた奴らが、少しずつ成長していくのを見る喜びを。チームが成長したり、一歩後退したりするように、俺たちにもいろいろあった。ケンカしたり、仲間が増えたり減ったり、大人になって、仕事を持ったり……お前が彼女を連れて来たこともあったよな」
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