いつも隣りにいてほしいのは

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「すいません!」 金髪の老婦人がさっと振り返る。化粧は濃く、日に焼けた顔は皺だらけだった。ブロンテーズのぴったりとしたTシャツが、ジャケットの下からのぞいている。 「そこ、俺たちの席なんです」 「あら、そうなの。こんないい席が空いてるなんて、と思って、私たちは少し上の席なんだけど、移動しようと思ってたのよ。こっそりね」 悪びれもせず、ウインクしてみせる。 「すいませんね、先約済みなんで。えっ?」 電話の向こうのライアンの声に耳を澄ませる。 「いや、何でもないよ。ほら、いい加減にこっちに来いよ」 「それで……考えてたんだけど、このチケットをダフ屋に売って、その金で、ピート達の分の席も取るってのはどうだろう?いい席じゃないかもしれないけどさ」 は?!もう試合が始まろうってときに、何言ってるんだ。どこまで義理堅い奴なんだよこいつは。俺にもその忠誠心を発揮してくれよ。 アレックスは苛立ちを鎮めようと、深く、大きくため息をついた。だがそれは何の効果もなかった。 スマートフォンに向かって叫ぶ。 「あのなあ!奴らはここにいるよ!もう外野席にいてビール飲みまくってるよ!」 「え?何だって?」 「だーかーらあ、俺はお前と二人で、ここで見たかったんだ!二人きりでな!だからあいつらには遠慮してもらったんだよ!」 「一体……なんでまた……」
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