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異世界召喚は突然に①
「アニキ。ついにこの日がやって来ましたっすね」
不良のテツが鉄パイプをギュッと握り締め、緊張の面持ちで鷹見高の校門に立つ。他不良達も全員、これから待つ県内一の不良校との全面闘争に滾る血を抑えながら番長の号令を待っていた。
そんな彼等の視線が一人の青年に注がれる。
その青年は精神統一をするように閉じていた切れ長の目を開き、夜空色の瞳にテツの姿を映した。
「おい、テツ。まさかテメェ。鉄パイプで喧嘩しようってんじゃねぇよな」
「え? 当たり前じゃないっすか。相手は県内一の不良達っすよ。流石に素手じゃあ…」
「馬鹿野郎ッ。男なら誰が相手だろうと拳で語りやがれッ。俺についてくるってんなら喧嘩に武器は許さねぇ」
そうテツから鉄パイプを奪い、投げ捨てると不良達が「流石、アニキ。カッケェ」、「男だぜ。一生アニキについてくぜ」と囃し立てる。
喧嘩は拳で語り合うもの。
そんなの一般常識過ぎて凄くもなんともないと、舎弟達の賞賛を軽く流して、これからカチコミを入れる相手の校舎を見据えた。
「行くぜ、テメェらッ!!! 」
肩に掛けた学ランを颯爽となびかせ、不良達を連れ鷹見高の校門を堂々と通った。のだが……。
「あ”ん? 」
校門を通った先にはある筈の校舎がなかった。
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