序章

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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 妊娠中というのは本当に厄介なもので、病気ではないとはいえ悪阻は体と心を蝕んでいく。 「うっ…」 船酔いが常に起こっているような状態といえば分かりやすいだろうか? 胸の辺りが常にムカムカする感覚と、三半規管がやられてしまっているかのような感覚。 個人差はあるけれど、私は重度の悪阻に悩まされてしまった。 動いていてもいなくても常に吐き気と嗚咽との戦いだ。 そして上手く吐くことが出来ずにいつも苦しむだけになってしまう。 食欲なんて出る訳もなくて、下手をすると水分すらまともにとる事が出来なかった。 「めぐみ…また体調不良か?」 真は仕事柄帰宅時間が遅く、一人で家に居る時間の方が長かった。 妊娠前には気にならなかったけれど、妊娠中の不安定な情緒ではそれに耐える事すら難しく、家事をまともにこなす事すら困難な私は寝込みがちになってしまった。 「うん…ごめんなさい。ご飯支度は何とかしたから」 「はぁ」 真は労りの言葉一つ掛けることなく不満気な表情をして一人、ご飯を食べていた。
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