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涙を見ても真の態度は変わらなかった。そればかりか乱暴に車のキーを持ち出すと何も言わずに部屋から出ていてしまった。
冷たくなった部屋の空気と響き渡る車のエンジン音…
残されたのは椅子に座って惨めに俯きながら声を殺して泣いている私…
「ごめんね、ベビちゃん…泣いてばかりで情けないママだね」
大きくなったお腹を優しく撫でながら語りかける。
トンッ
「あ…」
トントンッ
力強くお腹を蹴られて痛いくらいに胎動を感じる。
ポコポコと形を変えてお腹が動いている。
「そうだよね。強くならなくちゃね。ママ、頑張るからね」
赤ちゃんは生きている。
私のお腹の中で、力強く、優しく…。
(女の人って赤ちゃんを授かった時からもうお母さんなんだよね。私もちゃんとお母さんになれてるのかな…?)
大人の境界線は目に見えるものなのだろうか?
外見?年齢?本当にそれだけ…?
違う。年齢と心の年齢、つまり精神年齢は比例しない。
外見ばかり大人になって背伸びをしていても中身は変わらないかもしれないし、逆に幼くして大人顔負けの心を持つ事だってあるのだ。
私はそれを嫌という程知る事になった訳だけれど、現実と向き合う強さを持ち合わせてはいなかったーーー。
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