非日常は、突然に

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「それでは、1本頂けますか?」 「味は?」 口に入るものなら、何でも食すのが、お嬢様です。 「お任せします」 「お任せって……う~ん、そうだな、俺の好みは、ずんだかなぁ」 「では、それで」 店主は、1本にも関わらず、丁寧にパックに入れてくださいました。私は、代金をお支払いして、それを受けとると、池の側のベンチに座り、忙しくスマホをいじるお嬢様の元に行きました。 「お嬢様。お待たせいたしました」 私は、綺麗な黄緑のずんだのあんが乗った団子をお嬢様に差し出しました。 「あいにく、こちらが最後の1本でした」 まだ、他にも残っていると知ったなら「柿崎、買い占めてきて!」と言いかねませんので、そのように伝えました。 「うん、ありがと。これは、()えるわ!」 そう言うと、お嬢様は団子を池の方にかざして、スマホで、カシャリと写真を撮りました。おそらくエンスタにあげるものと思われます。「花より団子」のお嬢様であっても、やはり映える物は少しでも多く、エンスタにあげたいと思うものなのでしょう。 「頂きます。……う~ん、美味しい。ずんだ尊い!」 作り手ではなく、原材料(まめ)に対しての感謝の気持ちです。その細い体のどこに?という大食いなお嬢様にとって、団子1串など、いともたやすく食べ終わりました。 「まだ5本くらい全然いけるけど、ご飯も近いしね」 残りの団子の存在を伏せておいて、正解です。
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