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「それは、青少年保護育成条例が黙っていないでしょうね……」
「……は?何、ソレ。つまんな!柿崎のバカっ」
お嬢様は、今度は怒りに顔を赤くし、私を睨みました。その視線を右から左へ流して、申し上げました。
「さあ、お嬢様。日暮れ時ですし、少し散策しましたら、家に戻りましょう」
「やーだ。そう言えばさ、今晩はサーロインステーキだったわよね?10枚食べてやるわ!」
「シェフをいたぶるのは、お止めください」
「映える写真もっと撮るまで、帰らないもんっ」
そう言うと、お嬢様は、私から離れたところで、池の柵の切れ目をくぐり抜け、より池の水面に近づいてスマホをかざします。
「そんなに身を乗り出して……」
ため息をつきながら、周りを見ますと、夕方時の散策を楽しむ方々が、より増えてきていて、お嬢様をちらちらご覧になられています。
タイミング悪く、夕暮れ時の風が吹いて、シフォンのカーディガンがはためき、あの忌まわしい文字が、見え隠れしだしました。
「お嬢様!」
せっかく隠した意味がない!
「あの仲良しカルガモ親子を撮るのよっ。もうちょい近く……もうちょい……きゃっ!!」
「危ない、お嬢様!!」
一般市民に、あのTシャツが、さらされる!!
執事としての使命感に突き動かされ、お嬢様に全速力で駆け寄りました。
そして、前のめりにぐらついたお嬢様の体勢を整えようと両腕を伸ばしましたが……力及ばず。
ザッバ………………………ァァンッ!!!
水泳ジャンプ並みの水飛沫を上げて、私達は深い池の中へと落ちていきました……。
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