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 高校を卒業した成田が初めてまともについた職業が、家電量販店での販売の職業だった。  本来人見知りな上に口下手な成田には、決して適した職業とは言えなかった。それは今も変わらない。商品を見ている客に話しかけるのは未だになかなか上手くいかないままだ。ただし俺にはこれがある。成田は昼食を広げたテーブルの上に自分の名刺を出した。  成田健司(なりたけんじ)  家電屋の名前の下に自身の名前が印刷された名刺を見やる。  一年前になんとか試用期間を終えた成田は、正式に社員として店長から名刺を貰った。  お客様を席に着かせたら先ずは名刺を受け取ってもらえ。  店長や主任に口酸っぱく言われ、その都度成田は実行しようとした。が、如何(いかん)せん客を席に着かせるまでが至難であり、自身の売上は同期の人間の中でもダントツで最下位という状態が一年ほど続いた。社員というだけでクビにならないやつとパートの人間たちに揶揄(やゆ)されもした。
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