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メッセージ
『今、どこにいる? これから会えないかな?』
そう、私は高校生の頃の親友にメッセージを送った。
高校を卒業してから約一年半――私とその子は別々の大学に進学した。
っと、言っても頻繁に会っていたから今日みたいに急にメッセージを送っても対応してくれた。
今思えばこの学生時代の中で一番の親友だったかもしれない。
私はそんな子にメッセージを送ったのだ。
ピロンッ、と着信音が鳴る。
さっきメッセージを送った友達からだ。
『いいよ、今いつものところにいるんでしょ? 私も近くにいるんだぁ」
いつもの場所……それは私達が通っていた学校の最寄駅だ。
その駅は快速が停まるような大きな駅でなにかものを買おうと思えばだいたい見つかるようなところだった。
だから、二人でどこかに出かける時はいつもそこを指定していた。
『うん、そこにいる。駅の南口の改札』
私はそう友達に返信した。
私が友達に送ってからほんの一瞬、驚きの速さで返信が返ってきた。
『うん、わかった。今から行くね、多分五分もかからないと思う』
返信を見て、ホッと一息する。
これなら待つのにもあまり時間がかからなさそうだ。
少し時間を潰していよう。
そう考え、私はスマホに意識を集中させた。
それから何分だったのだろうか。
少ししてから友達からメッセージが届いた。
『今、駅にいます』
ん?
この返信に私は疑問を抱いた。
普通ならタメ口で会話をする相手が突然、敬語を使い始めたからだ。
打ち間違えでもしたのかな、そう思って見過ごそうとしたとき、またメッセージが届いた。
『私は今、駅の南口の入り口にいます』
南口っていうことは……すぐ近くだよね?
そう思って、あたりを見回しても友達は見当たらない。
それにしても、まだ敬語だなぁ……。
本当にどうかしてしまったのだろうか。
『私は今、あなたの見えるところにいます』
……流石に怖くなってきた。
変わらない文面、謎の敬語、ふざけているとは思えない。
『ねぇ、大丈夫?』
私はそう返信をしてみた。
『いつもの私だよ?』
これは絶対におかしい。
さっきまで親しみやすかった人がいきなり敬語を使っているのも、同じ文面をつかっているのも。
『ねぇ……本当に大丈夫なの?』
『今、私はあなたの後ろにいます』
私のメッセージに覆いかぶさるように友達からメッセージが届く。
……後ろ? さっき見た時はいなかったのに。
一体、何が起きて――。
後ろを振り返った瞬間、私は思わず息を呑んだ。
振り返ったときにいたのは友達ではなく――。
ーFinー
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