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10.帰還
「はぁっ! はぁぁっ!」
僕は、粗い息をついていた。背筋や額に、玉のような汗が浮き出ている。
「ここ、は?」
極めて危険な状況だったらしく、白衣を着た医師や看護師が、僕達を取り囲んでいた。
もしかしたら、脳に過剰な負荷がかかって、脳死状態に陥っていたかもしれないそうだけど、それよりも!
「さ、さとちゃんは!?」
ベッドには、横たわっている彼女がいた。
その目がゆっくりと、開いていった。
「ちょ……と……お、ねぼぅさん、だった、か……な?」
数年ぶりだからか、小さな、消え入りそうな声だったけれど、彼女はおどけたようにそう言った。
「あ、あは! おはよ!」
僕は、泣いていた。
彼女がこの世界に、帰ってきてくれた!
嬉しかった!
体が良くなったら、また、ハシュタのネオイカ焼きを食べようね! と、僕は彼女と約束をした。
「う、ん」
彼女は、笑顔でうなずいてくれた。
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