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03.魅惑のネオイカ焼き
ここで一つ断っておくが、イカ焼きはイカ焼きであって、ネオイカ焼きではない。あくまでも、別物なのだ。
海の家とか、祭りの露店でかつて普通に売っていたであろう『下処理したイカを焼いて、たれをつけた食品』ではないのだ。
多分、彼女が待っているあの辺りには、自動露店があるはずだ。ハシュタ飛翔駅の周りは大変栄えており、飲食店が多数並んでいるのだから。
僕は想像する。
きっと、彼女は適当にネオイカ焼き屋を見つけ、店の中に入ることだろう。そして店の中には例外なく、液晶パネルが複数台設置されているはずだ。
そのパネル一つで注文を受け付け、店内にいるメカメカしい、AI搭載サイボーグネオイカ焼き熟練職人が、丁度焼いていたであろう熱々のネオイカ焼きを、ピンを使って器用に取り出し、ナチュラルリサイクルエコファイバーでできた紙皿に載せてくれるものだ。
ネオイカ焼き……。かつてたこ焼きと呼ばれていたそれは、僕の大好物だ。
色々とあって、小麦という植物は絶滅寸前の希少な存在となった。蛸もまたしかりだ。そういうわけなので、代替の存在を、人は望んだ。
脱色脱臭済み。無味無臭の特殊海草パウダーを主原料とし、養殖の食用超巨大大王イカをダイス状に加工し、様々な具材と共に焼く粉物食品。それこそが、ネオイカ焼きだ。これがまた、うまいんだな。
ああ、いい。楽しみがまた一つ、増えた。
彼女とのデート。
それは楽しくて、そして、それでいて……とても切ない一時でもあるのだった。
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