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04.僕の彼女
大里美里奈。それが、僕の彼女の名前だ。
彼女は氏名に『里』の文字が二つあるものだから『さとさと』とか『さとつー』とか『さととん』とか、皆から親しみを込められながら呼ばれていた。
彼女は栗色がかった長いストレートヘアが特徴的で、どこか儚げな雰囲気を漂わせていた。だいぶ控えめに表現しても、美少女だ。
僕と彼女はハイスクール時代に出会って、そして、お付き合いをすることになった。
一年生の頃は、クラスこそ同じだけど、特に接点がなかった。
二年は別のクラスになって、三年で再び同じクラスになった。そして、たまたま所属する委員会が同じになって、話をする機会が増えていった。
告白をしてきたのは、彼女の方からだ。
僕は、こんな美少女に告白されるなんて、ドッキリか何かか? なんて疑う程には、非モテな男で、世間的にスれてもいたわけで、当初は疑った。
けれど、接していくうちに、彼女が本気で僕のことを好きになってくれたのだということに、ようやくのことで気付いた。
僕は、正直に謝った。まさか、僕のことを好きになってくれる子が現れるとは、思わなかったから。それも、さとちゃん……僕は彼女のことを、そう呼んでいるのだけど、彼女のような、クラス一の美少女に告白されるなんて、信じられなかったのだと言った。
彼女はくすくす笑って、本気だよーと、そう言って、許してくれた。
ああやっぱり、僕はこの子のことが大好きなんだ。そう思って、僕は彼女を抱きしめた。可愛いだけじゃない。内面も、穏やかで、とても優しい。
彼女の体は細くて、強く抱きしめたら壊れてしまいそう。
柔らかくて、温もりが暖かかった。
僕は、幸せだった。
でも。その幸せも、突然、終焉を迎えることになってしまった。
ある日彼女は、何の前触れもなく、流行病に倒れてしまったのだから。
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