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三年間のイタリア赴任が決まったのはその翌週の木曜だった。
赴任は三ヶ月後だが、その前に来月の初旬、二週間ほど出張が入るのでその準備もしておくように、と部長に言われた。
赴任という言葉に私はワクワクしていた。ずっと出していた希望が叶ったのだ。
夜、お風呂に入ったあと会社から送られてきた行程表と一緒に、イタリアとの時差や現地の様子を調べた。九時をまわり、いつもより少しだけ早く穂積君が帰ってきた。
イタリアの赴任が決まった――。
そう告げるとソファのL字部分に座りビール缶のプルタブを引こうとした穂積君の表情が変わる。喜ばれるとは思っていなかった。だから、言うなれば予想通りの反応かもしれなかった。
それでも、ちょっとは期待していた。
「よかったな」と言ってくれること。
「何年?」
「三年間」
「……結婚は? どうするの」
「籍を入れてから向こうに単身で行くか、帰国してから籍を入れるか、相談させて欲し……」
「子供は?」
まるで何かの面接を受けている気分だった。
「え?」
「子供はどうする。俺、言ったよね。すぐ欲しいって」
黙り込む私に彼は堰を切ったように話し出す。
「イタリア行ってどうするの? その後は? 詩子はさ、どっちつかずなんだよ」
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