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アーケードの、ガラスの天井から透けて見える空は薄水色の優しい色をしている。少し厚めのカーデガン一枚で過ごしやすい天気だ。
軒を連ねるカフェレストランやお店で気ままにお喋りを楽しむ人々を横目に、時折現れる足元の色彩豊かな装飾に目を奪われながらも、のんびりと歩いていく。
呼び出し音が鳴ってスマホを取り出すと、島貫からだった。
「今どこにいますか」
「ミラノ」
しばしの沈黙があり、少しすると
「ミラノ?」
ひっくり返ったような声がした。
「ミラノってあのミラノですか?」
「うん」
私は今確かに、イタリアはミラノ、アーケード型のショッピングモール、ガレリアの中にいた。日本との時差は八時間くらい。今こちらは正午少し前だ。
今回は三ヶ月後の赴任に備えて事前に出張の形で来ていた。週の前半に仕事が終わったので、来週中旬まで赴任前の現地の様子見も含めてこちらで少しゆっくりする予定だ。
「じゃあ」
島貫が言いかけるので、
「え?」
「明後日には着きます、多分」
「は?」
「パスタとピザめちゃめちゃ食って、五キロくらい太って帰りましょうよ」
「何それ」
計画性がなく行きあたりばったりな島貫がいつも通り過ぎて、なんだかホッとする。
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